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東京地方裁判所 平成7年(特わ)2949号 判決 1996年6月27日

裁判所書記官

釜萢範人

本店所在地

東京都町田市原町田六丁目一五番二号

株式会社

サマデイ

(右代表者代表取締役 相川秀希)

本店所在地

東京都町田市原町田六丁目一五番二号

株式会社

ヒューマンデザイン

(右代表者代表取締役 相川秀希)

本店所在地

東京都町田市原町田六丁目一五番二号

株式会社

ぐうん

(右代表者代表取締役 相川秀希)

本店所在地

東京都町田市原町田六丁目一五番二号

有限会社

ライフサービス

(右代表者代表取締役 諸橋聖子)

本籍

東京都町田市南大谷一二一〇番地一

相川令子

昭和九年一月二五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立澤正人、弁護人赤松幸夫(主任)同五木田彬、同長文弘、同菅野庄一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社サマデイを罰金四五〇〇万円に、

被告人株式会社ヒューマンデザインを罰金二六〇〇万円に、

被告人株式会社ぐうんを罰金九〇〇万円に、

被告人有限会社ライフサービスを罰金五〇〇万円に、

被告人相川令子を懲役二年に処する。

被告人相川令子に対し、この裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社サマデイ(以下「被告会社サマデイ」という)は、東京都町田市原町田六丁目一五番二号に本店を置き、学習塾・飲食店の経営等を目的とする資本金五〇〇〇万円の株式会社であり、被告人株式会社ヒューマンデザイン(以下「被告会社ヒューマンデザイン」という)は、同所に本店を置き、演劇・舞踊・催物の企画、制作、開催等を目的とする資本金五〇〇〇万円の株式会社であり、被告人株式会社ぐうん「以下「被告会社ぐうん」という)は、同所に本店を置き、出版、印刷、広告、宣伝等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人有限会社ライフサービス(以下「被告会社ライフサービス」という)は、同所に本店を置き、ビルの管理・清掃等を目的とする資本金一〇〇万円の有限会社であり、被告人相川令子(以下「被告人」という)は、被告会社サマデイ及び被告会社ヒューマンデザインの各代表取締役並びに被告会社ぐうん及び被告会社ライフサービスの各実質的経営者として、被告会社四社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、

第一  被告会社サマデイの業務に関し、法人税を免れようと企て、飲食店の売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

一  平成元年一〇月一日から平成二年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三億八四一〇万六四二四円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年一一月三〇日、東京都町田市中町三丁目三番六号所在の所轄町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億三六五六万四九五一円で、これに対する法人税額が四九七七万二四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第一八四二号の1)を提出し、そのまま法廷納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億四八七八万九二〇〇円と右申告税額との差額九九〇一万六八〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

二  平成二年一〇月一日から平成三年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億九二四七万八六一九円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年一二月二日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億九〇四二万四三四七円で、これに対する法人税額が六八〇九万六六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇六三六万六九〇〇円と右申告税額との差額三八二七万〇三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

三  平成三年一〇月一日から平成四年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三億三六九四万九七九七円(別紙3の修正損益計算書参照)であったもにかかわらず、平成四年一一月三〇日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億二九七四万四七八四円で、これに対する法人税額が八三六六万九三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二三八七万一二〇〇円と右申告税額との差額四〇二〇万一九〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  被告会社ヒューマンデザインの業務に関し、法人税を免れようと企て、公演収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

一  平成二年八月一日から平成三年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億四七〇五万九六六二円(別紙5の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年九月三〇日、所轄の前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七六七三万八四一〇円で、これに対する法人税額が一〇〇四万九八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の10)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三六四二万〇一〇〇円と右申告税額との差額二六三七万〇三〇〇円(別紙8のほ脱税額計算書参照)を免れ

二  平成三年八月一日から平成四年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億四四二三万九八四九円(別紙6の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年九月三〇日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億〇〇五八万三〇九七円で、これに対する法人税額が一三二七万八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の11)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二九六四万四八〇〇円と右申告税額との差額一六三七万一〇〇〇円(別紙8のほ脱税額計算書参照)を免れ

三  平成四年八月一日から平成五年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億五五七四万八一五三円(別紙7の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年九月三〇日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一三一二万三〇八八円で、これに対する法人税額が八六三万五二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の12)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額六二一一万九六〇〇円と右申告税額との差額五三四八万四四〇〇円(別紙8のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  被告会社ぐうんの業務に関し、法人税を免れようと企て、役員報酬を水増し計上するなどの方法により所得を秘匿した上

一  平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三〇〇七万四三五九円(別紙9の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年五月三一日、所轄の前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二五五万四三五九円で、これに対する法人税額が七一万五一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の4)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一〇五一万七七〇〇円と右申告税額との差額九八〇万二六〇〇円(別紙12のほ脱税額計算書参照)を免れ

二  平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三一五八万七三八九円(別紙10の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年六月一日に、前期町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二一五万二六八九円で、これに対する法人税額が六〇万二五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告署(同押号の5)を提出し、そのまま法定納付期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一一〇八万五一〇〇円と右申告税額との差額一〇四八万二六〇〇円(別紙12のほ脱税額計算書参照)を免れ

三  平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三六五八万三八九二円(別紙11の修正損益計算書参照)であったにもかかわらちず、平成五年五月三一日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三七〇万三八九二円で、これに対する法人税額が九七万九八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の6)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一二九〇万一六〇〇円と右申告税額との差額一一九二万一八〇〇円(別紙12のほ脱税額計算書参照)を免れ

第四  被告会社ライフサービスの業務に関し、法人税を免れようと企て、役員報酬を水増し計上するなどの方法により所得を秘匿した上

一  平成二年七月一日から平成三年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二七〇二万八五三五円(別紙13の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年九月二日、所轄の前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七四六万八五三五円で、これに対する法人税額が二〇九万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告署(同押号の7)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額九三七万五五〇〇円と右申告税額との差額七二八万四五〇〇円(別紙16のほ脱税額計算書参照)を免れ

二  平成三年七月一日から平成四年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二三一六万四五四三円(別紙14の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年八月三一日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六〇九万八一四三円で、これに対する法人税額が一六七万三八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の8)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七八九万二八〇〇円右申告税額との差額六二一万九〇〇〇円(別紙16のほ脱税額計算書参照)を免れ

三  平成四年七月一日から平成五年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二六一一万四八一九円(別紙15の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年八月三一日、前記町田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五〇七万五六一九円で、これに対する法人税額が一三八万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の9)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額八九九万九六〇〇円と右申告税額との差額七六一万一八〇〇円(別紙16のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

※ 括弧内の甲乙の番号は、証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の番号を示す。

判示全部の事実について

一  被告人の当公判定における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書四通(乙二ないし五)

一  勝又久子(七通=甲六二ないし六八)、小松匡(四通=甲六九ないし七一、七六)、相川秀希(三通=甲七七、八一、八二)、山崎令子(二通=甲八三、八七)、諸橋聖子(三通=甲八八、八九、九一)、山本令子(三通=甲九二、九五、九六)、広岡明美(甲九七)、長谷川紘一(甲一七〇)、志村昇(甲一七一)及び相川恒雄(甲一七二)の検察官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の税務署所在地等に関する捜査報告書(甲一七三)

判示第一、第三、第四の事実について

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(甲一七五)

判示第一、第二の事実について

一  小松匡(三通=甲七二ないし七四)、相川秀希(三通=甲七八ないし八〇)、五十嵐進(甲一〇五)、石原洋一(甲一〇七)、小川洋二(甲一二一)、濱本宣彦(甲一二四)、青砥紀夫(甲一三四)、葉山勝人(甲一三六)、赤澤敏明(甲一三九)、林秀典(甲一四三)、廣田吉昭(甲一四九)及び久富豊樹(三通=甲一五一ないし一五三)の検察官に対する供述調書

判示第一の事実について

一  小松匡(甲七五)、山崎令子(三通=甲八四ないし八六)、山本玲子(二通=甲九三、九四)橋本利子(甲一〇二)、天野重和(甲一〇四)、河野信貴(甲一〇六)、矢部秀法(甲一〇八)、佐藤伸行(甲一〇九)、長美岐(甲一一〇)、山中康成(甲一一一)、脇坂啓一(甲一一二)、佐藤良子(甲一一三)、土田貴子(甲一一四)、藤井千也(甲一一五)、辻聡子(甲一三一)、沼田修二(甲一三七)、堀内修治(甲一三八)、有馬収造(甲一四〇)、前田利勝(甲一四一)、神谷幹男(甲一四二)、近藤孝昭(甲一四四)、相川守雄(甲一四五)古水誠一(甲一四六)、高田雄一(甲一四七)、小野智士(甲一四八)、東香月(甲一五〇)、石井健之(甲一五四)、北河原純(甲一五五)、酒井眞(甲一五六)、増岡猛夫(甲一五七)、浜田昇(甲一五八)、田中秀雄(甲一五九)、池田俊治(甲一六〇)、根本雅章(甲一六一)、中川賢治(甲一六二)及び秋山欣也(甲一六三)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書(甲一)、退職金調査書(甲七)、福利厚生費調査書(甲八)、交際費調査書(甲一〇)、減価償却費調査書(甲一一)、修理費調査書(甲一二)、消耗品費調査書(甲一四)、環境・衛生費調査書(甲一六)、事務用品費調査書(甲一七)、広告宣伝費調査書(一九)、新聞図書費調査書(甲二〇)、研修・人材調査書(甲二三)、備品・保守料調査書(甲二六)、受取利息調査書(甲二九)、雑収入調査書(甲三〇)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲三二)及び交際費等の損金不算入額調査書(甲三三)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙六)及び閉鎖登記謄本二通(乙七、八)

判示第一の一、二の事実について

一  大蔵事務官作成のライブ・自販・受取調査書(甲二)、役員報酬調査書二通(甲三、四)及び旅費交通費調査書(甲九)

一  検察事務官作成の役員報酬に関する捜査報告書(甲一九〇)

判示第一の一、三の事実について

一  大蔵事務官作成の給与手当調査書(甲五)及び雑給調査書(甲六)

一  検察事務官作成の給与手当に関する捜査報告書(甲一九一)

判示第一の二、三の事実について

一  大蔵事務官作成の研究費調査書(甲二四)及び事業税認定損調査書(甲三一)

判示第一の一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第一八四二号の1)

判示第一の二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の2)

判示第一の三の事実について

一  大蔵事務官作成の水道光熱費調査書(甲一三)、運賃調査書(甲一五)、事務費調査書(甲一八)、新聞図書・教材調査書(甲二一)、企画・デザイン調査書(甲二二)、顧問料調査書(甲二五)、出演・公演・衣装調査書(甲二七)及び雑費調査書(甲二八)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の3)

判示第二の事実について

一  諸橋聖子(甲九〇)、広岡明美(四通=甲九八ないし一〇一)、相川秀子(甲一〇三)、石原誠(甲一一六)、山本武正(甲一一七)、榊原律美(甲一一八)、畠中桂子(甲一一九)河野貴康(甲一二〇)、酒井功恵(甲一二二)、岡野敦子(甲一二三)、相川隼人(甲一二五)、福田明央(甲一二六)、石富由美子(甲一二七)、新木郁子(甲一二八)、高橋玄一(甲一二九)、辻聡子(甲一三〇)、筒井広志(甲一三二)、横山由和(甲一三三)、高宮秀晴(甲一六四)、安藤友一(甲一六五)、江川朋美(甲一六六)、森賢(甲一六七)、竹山康彦(甲一六八)及び桜井俊郎(甲一六九)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の公演収入調査書(甲三四)、給与手当調査書(甲三五)、退職金調査書(甲三六)、消耗品費調査書(甲四二)、事務用品費調査書(甲四四)、広告宣伝費調査書(甲四五)、公演費用調査書(甲四六)、受取利息調査書(甲五〇)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲五四)及び領置てん末書(甲一八六)

一  検察事務官作成の公演費用に関する捜査報告書(甲一九三)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙九)及び閉鎖登記簿謄本三通(乙一〇ないし一二)

判示第二の一、二の事実について

一  大蔵事務官作成の運賃調査書(甲四三)

判示第二の二、三の事実について

一  大蔵事務官作成の出演料調査書(甲三七)及び事業税認定損調査書(甲五三)

一  検察事務官作成の出演料に関する捜査報告書(甲一九二)

判示第二の一の事実について

一  大蔵事務官作成の福利厚生費調査書(甲三八)、修繕費調査書(甲四一)、脚本作曲企画料調査書(甲四七)及び雑損調査書(甲五二)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の10)

判示第二の二の事実について

一  大蔵事務官作成の交際費調査書(甲四〇)及び交際費損金不算入額調査書(甲五五)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号11)

判示第二の三の事実について

一  大蔵事務官作成の外注費調査書(甲三九)、備品費調査書(甲四八)、人材研究開発費調査書(甲四九)及び雑収入調査書(甲五一)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の12)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の役員報酬調査書(甲五六)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙一三)及び閉鎖登記簿謄本二通(乙一四、一五)

判示第三の二、三の事実について

一  大蔵事務官作成の給与手当調査書(甲五七)及び事業税認定調査書(甲五八)

判示第三の一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の4)判示第三の二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の5)

判示第三の三の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の6)

判示第四の事実について

一  安永澪子の検察官に対する供述調書(甲一三五)

一  大蔵事務官作成の役員報酬調査書(甲五九)

一  登記官作成の登記簿謄本(乙一六)

判示第四の二、三の事実について

一  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書(甲六一)

判示第四の一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の7)

判示第四の二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の8)

判示第四の三の事実について

一  大蔵事務官作成の退職金調査書(甲六〇)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の9)

(法例の適用)

※ 以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。

一  罰条

1  被告会社四社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項(但し、判示第一の一の罪の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)。判示第一及び第二の各罪については、さらに法人税法一五九条二項(情条による)。

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項(判示第一の一の罪の罰金刑の寡額については、前同)。

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社四社

いずれも刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条

(犯情の最も重い判示第一の一の罪の刑に法定の加重)

四 刑の執行猶予

刑法二五条一項

(被告人についての量刑の理由)

本件は、学習塾(「早稲田塾」)・飲食店の経営等を目的とする被告会社サマデイ、演劇・舞踊・催事の企画、制作、開催等(劇団「音楽座」関係の業務)を目的とする被告会社ヒューマンデザインの各代表取締役であり、出版、印刷、広告、宣伝等を目的とする被告会社ぐうん、ビルの管理・清掃等を目的とする被告会社ライフサービスの各実質的経営者であって、これら被告会社四社の業務全般を統括していた被告人が、売上・公演収入の一部除外、役員報酬の水増し計上、給料手当・雑給の架空計上・退職金の架空・水増し計上、経費の繰上げ計上等の方法により、各社とも三事業年度にわたり、合計三億二七〇三万円余の法人税をほ脱したという事案であり、ほ脱率は通算約五七・六パーセントに達している。

本件はそのほ脱税額からして重大な過少申告ほ脱犯というべきであり、被告人は経理担当者らに指示して計画的かつ継続的に多様な所得秘匿工作を行わせたものであり、犯行態様も悪質である。被告人は、被告会社四社等のいわゆるサマデイグループが学習塾や音楽座ミュージカルという収支の不安定な事業を中心としていることから、将来の事業の行き詰まりに備えて、事業が順調な時期に資金を蓄積しようなどと考えて本件犯行に及んだというのであるが、そのような動機は特に酌量に値するとはいえない。被告会社各社が国税当局により査察を受けた後も、被告人は、自己らの刑事責任及び正規の課税を免れようと企て、経理担当者らと口裏合わせの謀議を重ね、多数の関係者に働き掛けたり、日付を遡らせた書類を作成するなどの罪証隠滅工作をした上、当局に対し関係者と共に約二年間にわたり虚偽の供述をしていたものであり、犯行後の態度も甚だ芳しくなかったところである。以上のほか、この種事犯については一般予防の必要性も大であることを併せ考えると、被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。

他方、前記のような罪証隠滅工作も功を奏せず、被告人のほか各被告会社の役員・経理担当者ら五名が逮捕・勾留されるに至り、右被告人ら六名のほか各被告会社関係者らも、所得秘匿工作等の事実を全面的に認め、捜査に協力するようになったこと、被告人も遅ればせながら全面的に自供し、以後は真摯な反省の態度を示し続けていること、被告会社四社とも、国税当局の指導に従い、本件各事業年度分の法人税を重加算税等の附帯税を含め完納していること、ほ脱率は極めて高いとまではいえないこと(被告会社サマデイは通算約四六・八パーセントにとどまる)、被告人は、学習塾の経営やミュージカルの企画制作等を通じて長年にわたり、社会的貢献をしてきたものであるが、本件の影響により音楽座の解散を余儀なくされるなど、すでにかなりの社会的制裁を受けていること、被告人は本件により二か月余にわたって身柄を拘束されたこと、各被告会社においては、二度と同種事犯を犯さないように経理体制の改善がなされていることなど、被告人のため有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の事情を考慮して、被告人に対しては、今回に限り刑の執行を猶予することとし、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社サマデイ・罰金五五〇〇万円、被告会社ヒューマンデザイン・罰金三〇〇〇万円、被告会社ぐうん・罰金一〇〇〇万円、被告会社ライフサービス・罰金五〇〇万円、被告人・懲役二年)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

No.1(1/2)

<省略>

No.1(2/2)

<省略>

別紙2

修正損益計算書

No.2(1/2)

<省略>

No.2(2/2)

<省略>

別紙3

修正損益計算書

No.3(1/2)

<省略>

No.3(2/2)

<省略>

別紙4

ほ脱税額計算書

株式会社サマデイ

(1)

自 平成元年10月1日

至 平成2年9月30日

<省略>

(2)

自 平成2年10月1日

至 平成3年9月30日

<省略>

(3)

自 平成3年10月1日

至 平成4年9月31日

<省略>

別紙5

修正損益計算書

<省略>

別紙6

修正損益計算書

<省略>

別紙7

修正損益計算書

<省略>

別紙8

ほ脱税額計算書

株式会社ヒューマンデザイン

(1)

自 平成2年8月1日

至 平成3年7月31日

<省略>

(2)

自 平成3年8月1日

至 平成4年7月30日

<省略>

(3)

自 平成4年8月1日

至 平成5年7月31日

<省略>

別紙9

修正損益計算書

<省略>

別紙10

修正損益計算書

<省略>

別紙11

修正損益計算書

<省略>

別紙12

ほ脱税額計算書

株式会社ぐうん

(1)

自 平成2年4月1日

至 平成3年3月31日

<省略>

(2)

自 平成3年4月1日

至 平成4年3月31日

<省略>

(3)

自 平成4年4月1日

至 平成5年3月31日

<省略>

別紙13

修正損益計算書

<省略>

別紙14

修正損益計算書

<省略>

別紙15

修正損益計算書

<省略>

別紙16

ほ脱税額計算書

有限会社ライフサービス

(1)

自 平成2年7月1日

至 平成3年6月30日

<省略>

(2)

自 平成3年7月1日

至 平成4年6月30日

<省略>

(3)

自 平成4年7月1日

至 平成5年6月30日

<省略>

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